たが聞こえぬか?
仙太 そこで言って俺が聞こえねえ法はありやせん、しかし馬鹿は承知だ。からかいなすっちゃいけねえ。私あ先を急ぐんで。
加多 物取り強盗、世が真直ぐに歩けると思うか?
仙太 なんだ、そのことか。へへ、真直ぐも曲ったもねえ、どうせこのご時世でさあ。百姓町人に利ける口の持合せはねえときまった。旦那、どうせ初手から横に這おうと腹あすえています。
加多 百姓町人に? うむ。その百姓町人に口が利けたらどうするのだ? 百姓町人が飛出してやれる仕事があったら、貴様はどうするのだ?
仙太 ご冗談を。アハハハハ。お士の天下だ。
加多 ……よし! では、その寺箱から胴巻ぐるみソックリここに置いて行けと言ったら何とする?
仙太 何だと※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
加多 見ろ、何とするのだ?
仙太 ブッタ斬るまでよ! と言いてえが、恩を着たお前さん方だ、もう、あやまるからいい加減にご冗談はおいて下せえ。
加多 真壁の仙太郎!
仙太 何っ!
加多 とか言ったな、お前の眼は五寸先は見えても一尺先は見えないのだ。その金を持って飢えて泣いている百姓の子を何十人、助けに行くとも言った。金打《きんちょ
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