小手と右肩口に同時に打下ろされてガバッ! とひどく大きな音がするが、どうしたのか斬れはしなかったらしい。矢継早やに仙太郎、流れた刀のはずみに乗って、甲の腰へ斬りつける。斬れない。甲がフラフラッとする所へ、ダッと体当り。甲、ワッと叫んで谷へ。転げ落ちながら「此方だ! 此処だっ! おーい、此処だ!」と叫ぶ声。それを見すました仙太郎、抜身をすかして見るが、暗くてよく見えないので焚火の方へ戻って火の光で見る。ササラのように刃こぼれがしているのだ。思わず感心して刃に指を持って行こうとしたトタンに、同じ右手から風のように飛出して来た抜刀の博徒乙、――これは着物を着ている――何とも言わずに斬りつける。オウといって身をかわした仙太、剣法も何も無い棒撲りに撲る。乙倒れる。仙太襲いかかって棒で犬でも叩く様に刀で二つ三つ撲ると、乙がウーンと唸って眼をまわしてしまう。再び焚火の方へ戻って来て右手の刀をヒョイと見ると、鍔元の辺からグニャリと曲ってしまっている。仙太は呆れてしまってそれをマジマジと見ている。――やがてそれをポイと捨てて失神した乙の方へ行きその刀を拾って見ると、これ又仙太に撲ぐられたはずみで切先五、
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