二、三人斬りました、が、それよりも、こともあろうに賭場を荒しましてね、場銭あらかた、その上に寺箱まで、といってもご存じはねえでしょうが、とにかくゴッソリ引っかついで逃げ出したんで、あんまりやり方が憎いんで、皆でとっつかめいて、眠らそうてんで。
加多 フーン、では賊だな?
喜造 へ? へえ、まあそうで。
今井 何という奴だ?
喜造 それが知れてりゃ、こんなガタビシするがものはねえんですがね。どこの馬の骨ともわからねえんで。ご存じかも知れませんが、この山の賑やかし[#「賑やかし」に傍点]は元来北条の大親分の手で、節季々々その時々に廻状が出て諸方の貸元衆や旦那衆お出向きの上、寄合い盆割でやらかすんですが、今度も常州一帯下野辺からまで諸方の代貸元達や旦那衆がズラリと顔を揃えて今夜も市は栄えていたんで。御存じありますめえが、盆ゴザに坐りゃ渡世人は、自刃の上に坐った覚悟で、へい、昨日今日ポッと出のバクチ打ちなんぞ途中から割り込んで来ることさえもようできることじゃねえ、それぐらいに凄い意気合いの物でがんす。貸元衆がドスを引きつけて睨んでおります。用心棒も三人からおります。シーンとしております。そこへ
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