ているのではないか! 筒井順慶が轍じゃ! すでに長州には福原越後が兵を率いて動くと約しているし、久坂義助、桂、佐久間克三郎等あり、因州に八木良蔵、沖剛介、千葉重太郎等が共に立つといえば――。
今井 東西呼応して立つ! 痛快だなあ、ムム! 諸先輩は余り慎重過ぎるなあ! (昂奮してジレジレする)
加多 アハハハ、閑話休題、筑波へ論じに来たのではない。地の理を、踏査に来たのだ。行こう。したが此処まで来ればそれも済んだも同然。少し休んで行くか。いや寒い! 焚火をしよう。(落ちている枯葉枯木を集め、懐中から油紙に巻いたマッチを取出し、火をつける)もう少し集めてください。
今井 (集めにかかりつつ)でも大丈夫ですか?
加多 何が? なあに、構わんコッソリ歩いてもオオッピラに歩いても隠密などというものはどうせ犬のようについて来るのだ。もうすでにそんな時期でない。(焚火が燃え上る)ハハハ唸っているじゃないか。幸いにして未だ存す腰間父祖の剣。
今井 (先程から身内の血が湧き立ってジリジリしていたのだが、加多の今の言葉に煽られて耐えられなくなり、龕燈を投げるように下に置いて、いきなり大刀をスラリと抜いて舞
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