取るのが狼になるか虎になるか、それだけのことよ。糞面白くもありはしねえ、勝手にしろさ。
仙太 まだいうのか、長五?
長五 何度でもいうぞ。お前は阿呆だ。夢を見ている阿呆だ。先程はお前に睨まれてギックリしたが、今度あ怖くはねえ。
仙太 (立上りかけるがフと自ら顧みて)ウム……くらやみ、もうお前、行ってくれ。(下を向く)
長五 (いいつのる)そうだろうが! 世の中が立直しがあるとか何とかで変にゴタゴタとグレハマに[#「グレハマに」は底本では「グチハマに」]騒ぎ出したなあ今日や昨日のことじゃ無え。方々で飢饉凶作、打ちつづいて、食えねえ人間がウヨウヨしているのも、五年や十年のことじゃねえぜ。下々の民百姓によく響いて来るものならば、もうトックの昔に響いて来ている筈だ。それがどうだ! おおそれ、遠いところを捜すことあねえ。今聞えて来るエジャナイカの叩きこわしは何のための騒ぎだい? 此処を通るという一揆だ! みんな虫のせいやかん[#「かん」に傍点]のせいで冗談半分にやっていることなのか? 大違えのコンコンチキだろうて! みんな民百姓下々の食えねえ苦しまぎれのなす業《わざ》だ。真壁の、それを……。
仙
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