あもともと百姓だ。
長五 その百姓になろうという奴が全体、三年も四年も何のためにヤットウを習って目録以上なんてぇとんでもねえ腕になった? 百姓に剣術が要るのか、兄きの前だが?
仙太 俺あ、その時々に自分のやることあ、トコトンまでやらねえと承知出来ねえ性分だ。それだけの話よ。
長五 アハハ、じゃまあやって見な。権兵衛が種蒔いて烏がほじくるってね。こんなテンヤワンヤのご時世が見えねえ訳でもあるめえに。ウンウン田畑を作る者がある。出来た物あソックリ取上げる者がある。二本差して懐手、ソックリ返った烏がな。(仙太返事をせずに下を向いている)まず権兵衛殿、阿呆面にクソでもひっかけられねえ用心でもしなよ、へへへ。
仙太 くらやみの、てめえ……。
長五 と、と! 凄え眼をするなよ。あやまった。物騒な男だ。口が過ぎた。
仙太 (寂しそうに)ハハハ、まあいい。ところで俺あ真壁に行く前にお礼に寄るところがある。利根の甚伍左親方。そして、翌日からスッパリとドスを捨てる。じゃあ此処でお別れだ。てめえ何方へ行くんだ?
長五 待ってくれ。(懐中からサイを出してひねり)半と出りゃ鹿島、丁と出りゃ筑波の賭場だ。一遍こっ
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