だ。しかし同じない命ならば、このままここで雪ん中でのたれ死にするよりは、前へ出て――。
水木 同じ無い命? しかとさようか?
仙太 ご冗談でしょう、へへ、いまさらそれを――。
水木 よし、では! (ツツツと仙太郎の方へ寄って行く)
仙太 な、なんですい? (と訳のわからないままに、左手の方へ身をよける。トタンにヒョイと振返ってすぐうしろが崖縁なのに気づいて)おっと、危ねえ! 先生、何をなさるんだ! (水木を見詰める)
水木 (気勢をくじかれて、苦笑しながら四、五歩退いて)なに、フン!
加多 水木さん! ……(間)……あなたは暫くはずして下さい。拙者に任かせて貰いたい。いや断じて! 加多源次郎、男児です。知っています! わかっています! しばらく……。
水木 そうか、然らば……(怒ったようなふうに右手に去る)
仙太 おかしな人だ。(見送っている……間)ありゃどうした人ですかねえ?
加多 神勢館で砲学をやっていた人で、あれでも小筒にかけてはまず名人。そんなことよりも、(句調がスッカリ変って親しい)仙太、こっちを向け、どうも傷が病《や》んで大儀だ。全く久しぶりだなあ。
仙太 傷が病むのは、よ
前へ
次へ
全260ページ中217ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング