平 (つづいて土手へ上って来そうにゾロゾロ顔を出した見物、村役人、五人組の者、身寄りの者などに向って)お前さん方、ついて来ちゃいけねえ!
代役 お構いの者に付き従い、無用の手当等の事をなすにおいては、厳しきおとがめがあろう。(お願いでごぜえます! と叫んで追いすがり這い出して来そうな身寄りの者あり)ならぬ、帰れ!
仙太 (奉書を掴んで差出しながら)お願えでごぜまする! お所払いご赦免のお願い書の儀お取上げ下さいますよう、お願いでござります!
段六 お願いでごぜます!
刑吏 再三再四、ならぬと申すに、またいうか! たってとあらばもう少し早く係りへ行け!
喜平 おい、くどい事はしねえがええ、無駄だ。それともお前たち、お上のなされ方に対して不服があるのか? あればあるように……。
仙太 いえ、そ、そ、そんな大それたことは何で……。ただ、ただ、私兄き共、百姓ばする外にどげえして生きて行く術《すべ》を知りましょう。田地お召上げお所払いになりませば、明日が日からのたれ死にでごぜます。ここの所おあわれみ下せえまして、どうぞ御願書お取上げ……。
代役 ええくどいと申すに! さがれ!
刑吏 お取りきめに
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