ないといっていて、しめえまで見たぜ、お前さん! こうなると女はキツいてのう、後生楽なもんだて! はあ、血だらけだ!
女房 ナマイダ、ナマイダ、私はもう……
声 歩けい! 立ちませうっ!
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(仙太と段六が、オッ! といって飛上って走りよる。同時に青竹を持った小者にそれぞれ襟首を掴まれた百姓平七と徳兵衛、および上林の弥造に同様首筋を掴まれた仙右衛門が、ズルズル引きずり上げられて来る。三人の百姓は殆ど意識を失い、身体中はれあがり、背中の着物はズタズタに破れ、食いしばった歯の間から泡の混った血を吐き、半殺しにされた犬のような姿である。立って歩く力は全くない。特に仙右衛門は叩きに手加減をされなかったと見えて、顎の辺まで紫色にはれ上り、後頭部の辺から流れ出して顎の方までへばりついている血。地べたに叩きつけられ踏みつぶされた蛙の姿である。――後から土手にのぼってくる検分の刑吏、代官所役人、手先、北条の喜平、喜平の子分二人。その他の役人は刑場に居残っているらしい)
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仙太 (走り寄って)あ! 兄さん! 兄さん!
代役 控えませいっ! (仙太の腰を蹴る)
喜
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