ためか誰のためか、しかも、そんな女まで引張って来ている、――大概わかっている。ふん、しょせんは糞土の牆《しょう》だろう。無頼は無頼だ。(……何といわれても仙太返事をせぬ。今井は呆れ果てたといった様子で仙太の背を睨んでいたが、あきらめて、粥も食い終つたし、椀をカラリと放り出して、出かける身仕度をする。手早く腹帯を締直し、血の脂で少しギチギチする大刀を抜いてあらため、土間に片膝ついて草鞋の紐を結び直しながら)……そんな女、僕がやってもよい。が、しかし、まことは、女がいるからではなくして、貴様の心に隙ができたから女ができたのだ。斬るべきものは、女ではなくして、貴様の根性だ。……これでよし、さあ、行くかな。
[#ここから3字下げ]
※[#歌記号、1−3−28]洲崎の浦の波越さじと、誓いしことも有明の……」
[#ここで字下げ終わり]
仙太 滝三。……滝三。
滝三 ……あい。
仙太 刀を持ったことがあるか? ……刀を抜いたことがあるか? うん、どうだ? ほれ、こりゃ小父さんの刀だよ。切れるぞ。(自分の刀を滝三に握らせる)
滝三 ……。(オドオドしていまにもワッとしぐれそうである)
仙太 ハハハ
前へ
次へ
全260ページ中189ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング