てしもうたそうな。
仙太 ……どこだ、そ、それは?
段六 佐分利の方の縄手だ。
仙太 あんだとっ! 佐分利の繩手! さ、さ、佐分……!
段六 あによ、そ、そんな恐ろしい顔すったい? ああに、下手人はわかりっこねえ。あんでも生残った人の話に、その晩はひでえ闇夜で、また、其奴等というのがひでえ切り手で、その仁なんども、直ぐ後を歩いていた者がバッサリやられるまで知らなかったそうな。後の方から一人々々追い打ちに斬られていても、どういうもんか、声もあげはせなんだということじゃ。……どうしたえ仙太公? おい?
仙太 (いきなり段六の胸倉を取って)去年の師走二十五日、闇の晩、佐分利の繩手で追い打ち! 嘘うこけ、段六!
段六 こ、こ、こ、苦しい、あによすっだい、これ! 嘘でねえ、嘘をついても何になるだ?
仙太 ……(段六から手を離して、ユラユラしながら暫く自分の前を見詰めて立っていたが、足が身体を支えきれなくなって、アムと低い唸声を出したまま前にのめり、うつ伏せに地に転がる)
段六 こ、これ! どうしたのじゃ、仙太公! これっ! 出しぬけに、まあ……仙太よっ!
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(丁度そこへ門内
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