るのなんぞと、そんねえな、あんた様! こちらにいる筈の真壁村の仙太郎と申す男の少し身寄りの者でごぜます。どうか、あわせてやって下せえまし。へ!
早田 なんだ、それならそれと早く言え、尻の方からなんぞ登って来て! 仙太郎ならば、それ、あそこの矢来のズッと右の方に屯所がある、そこにいる。行け! (言い放ち、走って揚幕へ消える)
段六 あれでごぜえますか、さようで。ありがとう存じまする。いいえ、麓の方からここまで出会う人ごとに四度も五度も刀を抜いたりしておどかされまして、そいで、あんた……。ああ行んでしもうた。やれやれ、ありがてえ。やっと仙太公にあえる! (本舞台へ、ビクビクしながら歩いて行き、柵門の辺まで行きウロウロしていたが思い切って右奥の方へ向けてビクビクもので小腰を屈めながら)へい、お願え申しまするお願えいたします。あのう、真壁村の仙(……そんなところから屯所まで聞こえる道理がない。返事の代りに屯所の方で十四五人の声で「オウ」と叫声がして、後、シーンとする。誰か二、三人の人間が何か命令している声。中に隊二の声で「遊隊の残りおよび一番隊は、三十八名は裏山より別手として太平山へ直行! 遊
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