ねえ。こないだあたりから見りゃ戦争ゴッコみてえなもんさ。しかし、本隊が留守だと見て取って、もしかすると追い討ちと来るかも知れねえから、やっぱり皆に出かけて貰わねえじゃなるめえ。その使いで来たんだ。皆さん、屯所ですね? (右手へ行きかける)
隊一 そうだ。それは愉快、腕が鳴っていたところだ。その担いでいる刀はどうした、仙太郎?
仙太 これかね? こりゃ分捕って来た。まだロクな刀を持たねえ連中に分けてやろう。
隊一 何処から持って来たのだ?
仙太 まさかドスが畑から生えてはいねえ。斬って取って来ました。
隊一 フーム、それだけ全部か! いつものことだが、やるなあ、貴様!
仙太 向うが弱過ぎるんだ。それを殺そうてんじゃねえ、チョイチョイとやったばかりで、ドス投出して逃げて行くんでね。
隊一 ハハハハ、ときに、一|刻《とき》ばかり前に貴公を訪ねて来た上郷村人足寄場の者だといった変な男にはあったか? いないといったら結城の方へ追掛けて行ったが?
仙太 あわねえ。どうしたんで? 寄場だと?
隊一 うむ。真壁の仙太郎さんのお名前をお慕い申してやって来たといっていた。貴公えらい人気だぞ。何でも寄場あた
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