の下の段あたりで、専らの噂だ。
遊一 何をいやがる、打つぞ!
遊二 おっと、危ねっ!
遊一 ハハハハ、丸は入ってねえ、オコオコするなて。
遊二 打たれてたまるか。的が違いやしょう、俺あ大八楼の女《あま》じゃねえ。ハハハハ。時に先刻まで砲音《つつおと》が聞こえていたが、てっきり味方が引いて来てその辺まで追込まれたなと思っていたが、また聞こえなくなったのを見りゃ、盛返して押し寄せたんだ。当分はまだ俺達にゃ軍運《いくさうん》は向いて来まいぜ。
遊一 全体がわからねえ話よ。ガンガン押出して行ってさ。結城だろうと下館だろうと叩き破り、江戸へ出て公方様なんぞ追払ってよ、その勢いで京都へのして天長様へ外敵打払いをお願えすればよい話だ。グズグズしているがものはねえ。
遊二 隣の内から猫の子ば貰うんじゃあるまいし、置いとけ。紫尾《しいお》の山で穴熊や猪を追うていた奴に何がわかるものか。
遊一 んでは、文武館に一、二年水汲みか何かでいただけで元が潮来の百姓の貴様にだって同じだろうが! 加多先生がいつかいうたぞ! 天下のことをわかるのは、お前達だ! お前達がホントウにわからないで、他に誰がわかるか! 自重し
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