しはできません。まして、この家に金といっては一分もありません。嘘だとお思いならば家捜しでも何でもなされませ。ただ子供達に手荒らなことは……。
徒二 弁口無用っ! 敢行っ!
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(六人が結束して、板の間に上りかかる。避難民の中から「アッ! アッ! 危ねえ嬢さま、危のがす、嬢さま! アッ!」と思わず叫声。――丁度そこへ、開いたままの戸口から無言で音も立てずに入って来た旅装の士一人。前場に出た今井である)
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今井 待て。
徒一 何を! おお、……尊公は何だっ! 邪魔をすると手は見せぬぞっ!
今井 ハハ、見らるる通り、拙者は通りがかりの者、悪いことはいわぬ、乱暴は止められい。
徒二 控えろ! 正義を行なうに何が乱暴だ!
今井 正義? これが正義か? では尊公等は全体どこの何という方だ? それが聞きたい。
徒一 ええい、われわれは筑波党天狗隊々士!
今井 ほう、天狗隊? アハハハ、左様か。ハハハハハハ。
徒二 笑うかっ! 何がおかしい!
今井 それならばおたずねしよう。尊公等は藤田先生組か? 田丸先生組かそれとも加多先輩つきか? (相手は何とも返事をし
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