も」に傍点]を着ている。六人の中、四人までがドキドキするような抜刀。他の一人は槍を、もう一人は竹槍を突いている。入って来るなり何もいわずに家の中をギロギロ見廻し、ガタガタ顫えている段六、恐怖の極、叫声も立てなくなっている避難民達、上りがりまちに二人の子を抱いて立っているお妙を暫く睨みまわす。……間。やがて、六人の中の頭株らしい、士姿の者が、ズカズカと進み出て、上りがまちの板、お妙から遠くない場所に、持った抜身をガッと突立てるなり)
徒一 金を出せ! 軍用金だっ!
[#ここから3字下げ]
(間。――静かな中で奥納戸でこの騒ぎに眼をさましたらしい子供の中の一人が、ヒーッと一声泣く。一声ぎりでパタリと止む)
[#ここで字下げ終わり]
お妙 ……どなたでござります、あなた方は……?
徒一 何もいうな! 金を出せ。この家にあるだけの金を出せ! 軍用金に借りる。早くしろ、いいや、何もいうなといったら!
お妙 ……ございませぬ。
徒一 なに※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
お妙 お金はチットもありませぬ。
徒一 (噛みつくように)言うかっ女!
お妙 たとえありましても、どなたかわかりません方にお貸
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