がして、肱で押された羽根扇が卓から床に落ちる)
  ……(それに気附き、ユックリした動作で下を向き、白い頭と左腕をしなやかに伸ばして扇を拾いあげる……白鳥が何かをついばんでいる)
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(ユックリと身を立てたかと思うと、声は立てずに笑って、調子がクラリと変って、軽快に)
[#ここで字下げ終わり]
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ごたいくつ、こんな話?
長々と語られる他人の身の上話です
ごたいくつに違いありません
なんなら、このへんで、思いきったオシバイをして見ましょうか?
それには、そうです(片方の乳当てをパラリとはずして、その中に入れてあった小ビンを取り出して光りにすかして見る)こんな物も持っていないわけではございません(小ビンをカチリと卓上に置く)
白いのもございます
こういうものも有りますの(ベルトにはさんで持っていた六寸ぐらいの刃物を取り出し、右手に持って、乳当てを取った左の乳房に向って擬する真似をしてから、それをカラリと卓上に置く)
ほほ! ごめんあそばせ、じょうだんですの
さて急ぎます
音楽を、どうぞ! アレグロ・ヴィヴァーチェ!

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