軍国主義一方の道をズンズン歩いていながら
革命の気分もたしかに有りました
国の外からは、聯合国が経済封鎖のアミを
次第次第にちぢめて来る
ヒットラアのドイツとソビエト・ロシアが同盟をむすぶ
「複雑怪奇」と言われた時代で
あれとこれとが、こんぐらかり
それとあれとが入れまじって
めまぐるしく移り変っていた。
内も外も、なんとかしなければ
もうどうにもやって行けない所まで来ていながら
さて、なんとも出来ない壁の前で
もがき苦しみ、狂い騒いで
左翼の理論の地盤から右翼の結論が生れたり
右翼国体の指導者が左翼出身者だったり
世界が狂えば人も狂う
愚かといえば愚かです
しかし、誰が愚かでなかったでしょう?
田舎出の二十にならぬ娘でした
理解はせずに、ただ飲みこんだのです
私が悪い
私に責任があります
しかし、私の何が悪いのでしょうか?
私にどんな責任がありますか?
では山田先生が悪いのか?
しかし先生に悪意はありません
先生は誠実に、本気になって
自分の信じている所を私につぎこんだだけです
そうです、山田先生は転向者でした
兄と同じ頃につかまって、おどかされて
あやまって出て来てから
はじめ
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