Nゴクと聞える)
喜助 どうしたつうんだ? いよう金吾、やるなあ。よし、その調子で勝負をつけべえ! さあ来い!(これは張切って土間をドシンドシンと言わせる)
金吾 ふう!(と、あおりつけた酒の息を吹いてからカタンと徳利をあがりくちに置き、土間におりる)ちょっくら、俺あ――
喜助 さ、来るか!
金吾 喜助さん、かんべんしてくれろ!(言って、喜助のわきをすり抜けて戸外へ)
お豊 どうしたの金吾さん?(これも急いで下駄をつっかけて土間へおりる)
喜助 外でやるか? ようし、雪の上で取っ組み合いも、おもしれえ!(戸外に飛び出す。ザクザクと雪を踏む音。その時は既に金吾もザクザクと足音をさせてかなり遠ざかっている)……待て待て金吾! どけえ行くんだ? おーい!
お豊 (これも戸外に出て来ている)金吾さあん! どけえ行くのう! 金吾さあーん!
喜助 全体どうしたつうんだ、あん奴あ?
お豊 その、黒田さんの別荘さ行くのよ。おおかた。
喜助 え、黒田さんの別荘と? こんな晩になって、この雪ん中を、気でもふれたか? ああれ、見ろ足跡だけで、もう姿あ見えねえや!

音楽 (短かく)

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