車の所で郵便屋の辰公がうしろから来て喜助さんどこさ行くと言うから、落窪の柳沢金吾をぶっ殺しに行くんだと言ったらよ、このトックリをジロジロ見やあがって、一升ばっちじゃ殺すわけにゃ行くめえなんずと言やがって、人の事、本気に取らねえや、シャラクセエ郵便屋め、そんで俺あ――(とベラベラやっている内にヒョイと思い出して)そうだっけ辰公がことづけやがったっけ、ええと、キレエなエハガキだ……(と、モジリの外とうのポケットをモガモガとさがして)ああこれだ。フランスはパリから柳沢金吾あてつう。この雪じゃおいねえから、お前そこい行くなら届けてくれと言やあがった。ほい、届けたぞ。(とエハガキを金吾に渡す)
金吾 そりゃ、すまんかった。どうも……
お豊 フランスのパリから――? 又その春子さんから来たのね、どれどれ?(と覗きこんで来る)
金吾 お豊さん、そのランプに、ちょっと火を入れてくれ。
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(言われるままにお豊が、わきの釣りランプにマッチをすって火をつける音)
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喜助 すっかりもう夜になったな。だけんど、外がイヤに明るくなったようだが、どうしただ?(ドシ
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