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壮六 ううっ! ちしょうっ! ううん!(と唸って手足をバタバタさせる)
お豊 やめてっ! 喜助さんっ、そんな、酔ってる人を、そんな、やめてっ!
喜助 へっ、ドン百姓のくせに、きいた口を叩くからよ! やいっ、起きて見ろ、この!(と又なぐる)
金吾 おい、喜助さんとかよ、もうやめねえか!壮六あ酔ってるんだ。
壮六 うう! うう!
喜助 へっ、お前の連れかよ? だら、こん野郎つれて帰れ。酔うんだったら、そこらのドン百姓なんず、てめえんちの火じろに水っぱなでも垂らして酔ってりゃ、よからず、壮六だか、じんろくだか知らねえが、この――(ガツンと又なぐる)
金吾 お前、喜助と言うんか?
喜助 そうよ、それがどうんた?
金吾 この壮六つうもんは、俺の仲良しの朋輩だ。よくも、そいつをなぐってくれたな。
喜助 へっ、なぐったが、どうしたつうだ?
金吾 こうしたつうんだ!(言うなり、相手をひっつかんで、ウッ! と叫んで投げ飛ばす)くそうっ!
喜助 わっ!(ドシン、ガタン。ベリベリベリと鳴ったのは喜助の身体が障子を破って襖の所まで飛んで行った音)
金吾 野郎っ!(又とびかかって行く)
喜助 うっ! わあっ
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