驍ケえよっまったく! よそ土地の人間が、海尻へんまで出ばって来て、土地の女をくどかなくともいいだろう?
おしん まあまあ、喜助さん、そんな大きな声出さずとも――(あとはよく聞えぬが、いろいろ言いなだめている)
喜助 大きな声は地声だあ! 誰だと思う――お豊を出せ! お豊を連れて来うっ!
おしん お豊ちゃんは、だから、今お座敷に出ているから――
喜助 お座敷と? へっ、芸者々々と芸者づらあしても、二枚監札のダルマだねえか? 気どるねえ! 第一、農事試験につとめているかなんか知んねえが、馬流へんの小僧っこに、この土地を荒されてたまるけえ!
おしん まあまあ、喜助さんよ、ひとつ飲んで――(と、こちらへ聞えるのをはばかって、しきりとなだめて静まらせる。ガタンと言わせ、ブツクサ言いながら酒を飲むらしい)
壮六 (こちらでは、カッとなったのをおさえて、かえって低い声になって)ふふ、馬流の小僧というのは俺がことか? どうも、さっきから、なん度からめば気がすむんだ?
お豊 まあまあ、かんにんして壮六さん。喜助と言ってね、この町でバクチ打ったりして、うるさい奴だから、がまんしてね。
壮六 うむ。……(酒
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