と泥を叩きつける。歌)盆が来たのに、踊らぬ奴はあ。
金吾 (おくれて合せて歌う)……踊らぬ奴はあ。
二人 木ぶつ金ぶつう、石ぼとけ。はあ、どっこいどっこい、どっこいしょ。……(くり返しはじめる)盆が来たのに――

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その歌の尻にオーバラップして遠くから女性二部合唱、(春子と敦子)の歌声が流れてくる。「ドナウ河のさざなみ」こちらの歌と向うの歌のオーバラップはしばらくつづく。

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月はかすむ春の夜や
岸辺の桜、風に舞い
散りくる花のひらひらと
流るゝ川の水の面
さをさすささ舟、くだくる月影
吹く風さそう花の波

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二人の歌は次第に近づいて来て、やがて疎林の間を歩む二人の足音がこちらに近づく。
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香川 (それを聞きつけた瞬間に盆歌をやめている)あ、春子さんたちが、こっちへ来る。
金吾 (これも歌をやめて)へ? ……(女たちの歌声)ああ。
香川 食べる物もって後で行くと言っていたから……(二人は耳をすまして女たちの歌を聞いている)よし! どうするか、この中に隠れていてやれ!(ドタドタと足音をさせて、カマ
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