のなあ、お母ちゃん――(いきなり手離しでオイオイ、オイオイ泣き出す)
金太 春子おばさんはな――(これも姉の泣声につられて、オイオイ泣き出す)
お豊 するつうと――(ト胸[#「ト胸」に傍点]をつかれて口を開けて立つ)
金吾 お豊さん、いま帰りやした。これが春さんの……(首からさげた木箱をゴトリと上りくちに置く)
お豊 (ふるえる声で)まあ、上りなんして――(ゴト、ゴトと金吾が上にあがって、囲炉裏端に坐る)
お豊 お仙、金吾おじさんにお茶出すだ。
お仙 あい。(涙声)
お豊 金太も上れ。そいから安三、お千代なんずは、そらそら、飯ば食え。(それらの小さい子たちがお膳に坐って箸などを取る音)
金吾 ……喜助頭梁は?
お豊 喜助は二三日前から仕事で小諸に行きやした。
金吾 そうかよ。……(無感情にポツリと話し出す)……空襲にうたれてな。いや、俺あやっと、この人ば上野の駅でみつけてな、そいで、こっちへ一諸に逃げて連れて来る気で、切符も手に入ったども、そこへまた、えらあ空襲でな。いや、その前から、なんか空襲の時に、瓦なんか落ちてきて胸をうってな、あばら骨が折れたんじゃねえかと思う。弱っていたが、
前へ
次へ
全309ページ中296ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング