ニいう噂を耳に入れてね、どういうのか、こいでも人間の内かなあ、その孫の顔を一目見たいような気がしてな、そいで尋ね尋ねて、こうやってここまで辿りついて、そいで君に逢ったら孫のことも敏子のことも春子のこともおっぽり出してこうやって握り飯に噛りついているのだ。ガキだ。だのに君はそうやって相変らず、春子や敏子が何処に行ったか、そいつを心配している。君の勝だよ。春子は君のおかみさんだ、そんで、その赤ン坊は、わしの孫じゃなくて、君の孫だ。ひとつ、よろしく頼むよ。わしあ、ここいらで、消えてなくなろう。(立上って、フラフラ戸口を出て行く)
金吾 敏行さん! そんな、あんた――そいで、あんたさんはこれから何処へおいでになりやす?
敏行 ははは、いや、群馬県の方にちょっとした縁故があるからな、そこへでも行く。
金吾 そうでやすか、そいじゃ、これは失礼でがすが、この残りの握り飯は持っていって下せえ。
敏行 そうかねえ、すまんなあ、そいつは。おかげで助かった。――そいから今言った、市川と保土ヶ谷というんだが、春子たちの行った先ならそれは市川の方じゃないかな。わしあ、そう思う。保土ヶ谷へんは、わしあ昨日通って来
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