ろつうんだ!
馭者 わあ?(とラチがあかない)
春子 かわいそうに! お父様、かわいそうだわ!(泣きそうになっている)
勝介 (困って)だが、どこまで走って行くのかね? 馬車の行く方へ行く方へと行くのだから、どうも、きりが無い。(言っている中に、やっと馬車が停って、あたりが静かになる)
春子 坊や、もう駆けるの、よしなさい! 駆けるの、よしなさい!
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静かになった遠くの川原で微かに馬のいななく声。
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春子 あらら! あの岩の蔭に馬がいるわ! 親馬かしら?
壮六 ああ、おふくろ馬でがす、あれが。なんだ、母親の所へ駆け出したんだ。ハハ! 小僧め、遠っ走りして遊んでいる所へ、馬車を見てたまげちゃって母親の所へ逃げ帰ったんでやすよ。途中でとまらねえわけだ。
勝介 やれやれ! ハハ、たちまち落ついて、親馬の腹に顔をこすりつけている!
壮六 ああやってまだ乳を呑むんでやす。
春子 まあねえ!(涙ぐんだ声)よかったわ! よかった!(ほとんど泣いている)
勝介 やれやれ!
壮六 ハハ、仔馬なんて、みんな、ああでがす。
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川原の方
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