、お父ちゃん。田舎の方がいいなあ。
金吾 うむ……
老婆(衰えたシャガレタ声で)あのねえあんた方、これを買ってくれませんかねえ、これはあのこわたり[#「こわたり」に傍点]の珊瑚珠ですけどね。
金吾(びっくりして)何でやす?
老婆 こわたりの珊瑚珠ですけどね、買って下さいよ。金はいりません。なにか食べるものを持っていらっしゃったら、なんでもいいから、少しでいいからそれを下さいな。いえ、小さい孫が病気でしてね、何とかして牛乳を手に入れようと、いくらそこら中を探し歩いても見つからないし、オモユでもと思っても一粒もお米はないし、もうこうなったら何でもいいんですから――
金吾 そうでやすか……そいじゃ、これを――(と懐から袋を出して、その中からホシイをつかみ出す)金太、そこに紙があるべ。
金太 あい。(紙の音)
老婆 ああっ! ありがとうございます! ありがとうございますよ!
金吾 たんとは上げられねえ。……いえ、珊瑚珠なんず貰ってもしょうがねえから、ようがすよ。
老婆 ありがとうございますよ!(手離しでオイオイ泣き出す)これで孫が助かります。そいじゃ――

[#ここから3字下げ]
(その紙包
前へ 次へ
全309ページ中269ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング