「くら金庫に入れといたからちって、物が紙幣だろうが。灰になっているにきまっているよ。
老爺(かみつくように)中のものは紙であろうと何であろうと焼けねえという保証つきの金庫だぜ、クソッ!
警防団員 そりゃお爺さん、ここらが焼けている最中の熱度、おめえさん知らねえからだよ。
老爺 へん、人のことだと思って、君はお安く言うがね、わしあこれでも息子を二人、南方に出征させているんだぜ。君みたいな、ここいらでマゴマゴしている人間はそれでもよかろうが、息子を二人兵隊にとられてる人間だ俺あ。それが財産のありったけを入れてある金庫位、助けてもらうのは当然じゃないか、何を言ってやがるんだい!(ガンガンと焼け材木を叩く)
警防団員 息子が二人出征したからって、何もいばるねえ。今となっちゃ、戦線だろうと、ここだろうと同じこった。南方あたりじゃ戦争なんかしねえで、芋を掘って昼寝してるそうだぜ。
老爺 へへへ、何を言ってやがる。この腰抜けめ!
警防団員 何を、気ちがい爺いめ!(口先だけは、今にも叩き合いの喧嘩にでもなりそうな調子だが、それほどの元気もない。それを聞きすてて、金吾と金太郎は歩く)
金太 ……いやだな
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