Oのような気がするけど、あれから三十年の上もたっちゃってるのね。忘れないわ、たしかあなたがここを掻いている時に、春さんや私や、そいから敏行さんや、そうそう、あれはイトコの香川も一緒でしたっけ。八ツ岳へ登るんだと言ってここを通りかかってさ。案内に無理やりあなたを引っぱって行ったことがあったっけ。歌をうたったね、そうそう――札幌農大のうた――(ウロ覚えの歌の節で)
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都ぞ、弥生のくも紫に――
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金吾 (後をつけてうたう)都ぞ弥生の雲紫に――覚えていやす、ははは。
敦子 尽きせぬ香りに濃き紅や――(歌ってる内に涙声になって、うたえなくなってしまう)ばかねえ、若い時というものは。あの人もこの人も、人の心も知らないで――私もこうしておばあちゃんで、金吾さんもおじいさんになった。
金吾 まったくだなあ、ははは。(寂しく笑う)
お仙の声 (林の奥から若々しい)おーい、敦子おばさあん!
春子 (その尻に乗って、子供のようにはしゃいだ声)おーい、敦子さまあ!(二人はこっちへ走って来るらしい)
敦子 (ふり返って)そらそら、春子さんの極楽トンボがとんでくる。あ
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