轤クにすんだようで、その間もたまあに春子さんは金吾のところに見えたようで、一番しめえに見えたのは、そうだ忘れもしねえ、太平洋戦争が始まった年だったから昭和の十六年だ。なんでも東京でひどい病気になられたそうで、その後の養生をこっちでさせてえつうので敦子さまと敏子さまが連れて来さしってね、その春の末から秋まで別荘で寝たり起きたりしていなすった。その間、金吾は例の通り、ちゃんとめんどう見てやってね、一生一度、半年近く春子さまとシンミリ暮したわけだ。
はは……(と寂しく笑って)といっても、金吾もその時は白髪の方が多いジジイになったし、春子さんも、もういい年で、すっかりやつれてしまいなすってね、それに、病気がひどい熱病だったそうで、それ以来、どういう加減か、頭がすっかりぼけてしまって、どうにかすると十二三の子供みたいになっちまった。それまでの苦労があんまりひどかったせいもありやしょう。何を見てもすぐにおびえる風でね、ただもうお豊さんの娘のお仙ちゃんや、その弟で金吾の後取りの金太郎、これはもう十四五になって金吾の内へ来たっきりになっていたが、この金太郎やお仙ちゃんを相手にして、まるで小さい子のよう
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