モオてならねえんだ!
お妻[#「お妻」は底本では「壮六」] だけんど、そんな事で落窪の衆をなぐったりなすったりしていると、又、やれ、仕返しだなんて、ますます事がこんぐらかりやしないかねえ。近頃じゃ、なんかと言うと直ぐに国策だ国策だで、ちょっと何かすると駐在まで乗り出して、人の事を国賊だと言ったり、村八分にするだなんとおどかしたり、うるさい世の中になってきたからなあ?
喜助 人間が正しい事をしてるのに、何の怖え事があらす? 国策だとでも国賊だとでも何とでも言いな! ただなあ、百姓に肥料の配給をとめるつうのは、大工からノコギリを取り上げるのと同じで、捨ておけねえぞ。な! そういう事をやってええのかお妻さん、返答しろ!
お妻 そんな事、わしに言ったとて、困りやすよ。
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外の道を一二の村人が通る。「お晩でやす」「お疲れさんで……」などの声。
[#ここで字下げ終わり]
壮六 (靴音をさせて近づいて来て)おお、喜助棟梁、こんな所でどうしたんだ。
喜助 ああ壮六かよ。なあに、金吾のことでな、今落窪の実行組合の世話役を一人ひっぱたいて来たとこだ。あんまり話がわからねえんで。
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