ニ力づくの争いが起きかねない。どうもこんなことになるというのが、金吾君が、せっせと百姓をして、ああやって人の手をつけねえ奥地で立派な水田持ちになったのを、黒田さんとの関係が出来たからだと、みんな見るだなあ。羨しがって、焼もち半分に、憎んでいた。そこへこうやって供出々々ということになって、金吾君は黙ってドシドシ割当以上の供出をやるしな。左様さ、どうで金吾君の供出も、落窪の供出全体の率になることだから喜んで居りゃええのに、あふられちゃってハタが迷惑だと思う。どうも人間というものは一筋繩で行かねえものだ。そこへさ、ははは……(淋しく笑って)黒田さんの別荘の、あの春子つう人を金吾君が好きになってるのばなんか怪しからんことのように見るだなあ。黒田の別荘を開墾したくねえという金吾君の気持を、それに引っかけて、取るだ。こいでみんな男と女で、自分達だって折があれば、ひっついたの、惚れたのはれたので、いい加減やらかす癖に、他人のそういう事は、イヤらしく見えるもんだ。そんなことが話がもつれる原因として小さくねえさ、ははははははは。

喜助 (海の口の町はずれの居酒星「杉や」の店の前の縁台で五合ますからジカ
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