黷ェ轟さん、何度も言葉を返すようで失礼でございますが、その柳沢金吾という男は、別に食糧の増産に反対してるわけじゃねえんでがして、あすこの林を切り払ってしまうと、あの下の段の落窪の水田の水の調子がすっかり狂ってしまって収穫が半分以下になりやしないかと心配していやすんで。
轟 しかしねえ、今君の言ってる、あの落窪の山林の下の七八町歩の水田というのは、あらかた私の家の田地でな。いや、私にはあの上の山林を切り払うと水の加減がどうなるか、というような細かいことはわからないがね、何れにしろ、それがよくても悪くても、自分の田地なために、これ以上立ち入ったことをいうのは工合が悪い。
壮六 いえ、それは私も存じておりやすが、金吾の言いますのは、あの水田が誰の持物であろうと、上の林を切れば荒れるにきまっとる。それを知っていながら、みすみす僅かなソバ畑なぞを作るために、山を開墾したりは出来ないと、こう言いやすんで。
轟 しかし、この間、落窪の実行組合の人がやって来て、ちょっと言ってたが、その柳沢君というのには、あすこの山林を開拓させたくないというわけが、他にもあるんだそうじゃないか? ――なんでもその自分が
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