チて来なんし。今日んところは、俺がちゃんと皆さんに言っときやすから、しょうねえ、行って来なんし。
金吾 ありがとうがす、皆の衆には悪いけんど――じゃ俺あ、このまま出掛けるだかんな。ちょうど一時半の汽車に乗りゃ、今夜東京に着けるだから、――(ガタガタと裏口から上って、タンスの抽出しから財布などをつかみ出し、また下りて下駄を出してはく)壮六、すまねえ。後は頼むからな。
壮六 馬鹿たれが、ホントにまあ……
金吾 農民道場の衆たちにもよろしく言ってな。喜助さんが腹あ立てねえように、お豊さん、どうかひとつ――そんじゃ……(カタカタと裏の背戸から林の小道へ出て走るようにして出て行く。向うの刈田で小太鼓のすり打ちとともに農民道場の生徒たちの合唱歌が湧きおこる)
お豊 (立って見送りながら)金吾さんつう人も何というこったかなあ。
壮六 (これも見送りながら)今日というめでてえ日に、あの馬鹿野郎……(二人の嘆息をかき消して、明るいうち開けるような「農民道場の歌」が高原一帯にこだまする)

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その合唱の中に――
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[#3字下げ]第12[#「12」は縦中横]
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