Aそん時も敦子さまに襟首をつかまれるようにして、金吾は春子さまの後を追っかけて東京へ行ったんでやす。しかしその時にはもう、春子さまが何処に連れて行かれただか、いくら探しても見つからなかった。金吾はがっかりして、痩せ衰えて東京から戻ってきた……いや、その後も、三年に一度、また二年に一度といったふうに、春子さまは落窪の方へヒョックリ現われちゃ、また東京へ舞い戻る、ということを繰り返してござらしたが、その間、あの方も東京で、いろんな目に会っていたようで、時によると、ホントの乞食のように落ちぶれて、病気になったりしてやって来たり、かと思うと、とんだ成金の奥さんみてえに着飾って、ニコニコしてやって見えたり、また時によると、妙な三百代言みてえなご亭主とも旦那ともつかねえ男と一緒にやって来たり。つい、向うの境涯の潮先と金吾の方の潮先とが出会うということがねえだなあ。そうしちゃ春子さまはまた東京へ戻って、何やら勝手な暮しをなすってるようだし、そうやって十年の余も過ぎてしまって、世の中は大正から昭和に入りやしてね。すると、金吾の方でも、もう四十をとうに過ぎて、春子さまのことを考えても、カッとなることも、
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