A私あちょうど用があって、海尻の内から、駅の向うの左官屋へ行っての帰り途でやした。もう秋口で、夕方おそくなったんで、もう寒うがす。急いで帰ろうと村はずれの権現さんの曲り角の所まで来ると、すこし薄暗くなった中に二、三人、人立ちがしていやす。

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すこし離れた所を千曲川が流れる水の音。
道を急ぐお豊の下駄の音。
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村人一(男) どうしたつうんかなあ? こんな所にいつまでも倒れていて、もう日が暮れるがなあ。
村人二(女) だって、どっか加減が悪いずら?(そこ倒れている人に向って)なあお前さま、どうしただ? よ? どっか悪いのかい?

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かすかに女の唸る声。お豊の下駄の音とまる。
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村人一 とにかく様子が、このへんの者じゃ無え。汽車でやって来ただなあ。
村人二 可哀そうにさ。こんな小さな子まで連れて――ねえよ、あんたさん! どうしただよ?(女の低く唸る声。……子供に)おめえ、どっから来ただい?
少女 (七、八才位の)あっち。
村人二 これ、おめえのおっかあかよ?
少女 うん。
村人一 ガタガタふるえ
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