A昔からズーッと、聞こうとしなかった、この春子が悪いのですから、すべては自業自得ですの。
だのに困ったことのあるたんびに、あなたの所にやって来ちゃあなただけでなく、こうして木戸さんにまで御心配をかけるなんて虫が良過ぎると思うの。ごめんなさいね敦子さん、木戸さんも、どうぞかんにんして下さいね、だって、ほかに、行くところが無いんですもの。
父の親戚は、もうほとんど無いし、一二軒残っているのはみんな岡山の方にいるんだし、長与の方の親戚はみんな私の事なぞかまってくれないの。また、敏行がああして自動車をのりまわしたり、帝国ホテルで株式の創立総会を開いたり。
ハデな事ばかりしているのを見ていれば、誰にしたって、その蔭で私たちがこんなに困っているとは思わないでしょう。敦子さん、あなたにはこれまでホントの事を言わなかったけど、今日は言ってしまいます。父が私のために残してくれた財産は、もうスッカリ敏行のために使われてしまったの。麻布の家は幾重にも抵当に入っているし、渋谷の方の土地は売り払ってしまったし、それから株券だとか宝石や貴金属なども一つも残っていません。そしてあの人はああして新橋の方にその芸者の人
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