スそうでね。右の足より一寸ばかり短かくなったので、びっこを引くけど、もう痛くもなんともないの。敏ちゃんこそ、一郎を負ぶい通しじゃ大変だろう。いっとき、おろしなさいよ。
敏子 いえ、いいんですの。
一郎 (幼児。この子は最後まで時々幼児の言葉で何か言う)お母あちゃん。あんよ、あんよ!
金吾 いやあ、あの時、空襲の中を俺がリュックに入れてかけだした坊やが、こんなに大きくなるもんでがすねえ。
敏子 金吾おじさんには、お母さんと言い、この子はこの子で、命を助けてもらった。あたしはホントに何と言えばいいでしょう?
敦子 まったくね、何と言えばいいだろう? こうやって春さんのお墓の前で敏ちゃんと一郎と金吾さんと私と、それに金太郎ちゃんに杉夫……さてね、お互いに今さら何と言っていいだろうねえ?
金吾 はは、そうでやすよ。そいでも、敏子さんと坊やがこうして元気でいて、杉夫さんが無事に復員して来なすったのは、何よりでがした。
敦子 いえね、戦争がすんで直ぐ、こちらへお墓参りにと思っていたけど、何やかやと、ゴタゴタしていてね、そこへ四五日前に杉夫が戻って来て、いえ、まだ外地に渡っていなかったので早かった。そいで何はともあれ、あなたにもお目にかかりたいし、春さんにも逢いにこようと言うので、やっとこうして来たの。だけど、金吾さん、良い場所にキレイなお墓をたてて下すったわ。
金吾 いや、あれこれ考えやしたが、ちょうど焼け残りの石で昔黒田先生が別荘の暖炉を築くために選びなすった石がありやしたからね、海の口の石屋に頼んで刻んでもらって、俺がおぶって来やした。ハハ。
敏子 小父さんが、おぶって――?(涙声になっている)
敦子 ……だけど、誰だか知らないけど、別荘もキレイに焼いたものね? 誰が火をつけたのか、わからずじまいですって?
金吾 開墾の事やなんかで村の者たちから私あ憎まれていたしな。それに近ごろのこの辺にも妙な流れもんが入りこんで来て空家に入って火をもしたりしやすからね、村の者がしたとも限らねえ。今さら、そんなことをセンサクしてもしようがねえから捨てて置きやす。
敦子 そうよ、それでいいかもしれない。春さんのお父さんがお建てんなって、それから春さんが一生の間、やって来ちゃ、泣いたり笑ったり……金吾さん、あんたもここに来ちゃあ、いろんなことがあったわね? それがこうして焼けてしまって、残って
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