、今日はもう駄目だ。
金太 あ! お父ちゃんだ! お父ちゃん戻って来た!
お仙 ああ!(その二人のいる所へ向って、ションボリと砂利を踏んで近づいてくる金吾の足音)
お仙 お帰りなんし、金吾おじさん!
金吾 (低く)うむ……
金太 お父ちゃん、どうしただよ? 春子おばさん、見つかったのか?
金吾 う、うむ……(三人が家の方へ向かって駅を出て歩き出している)
お仙 どうしたの、おじさん、その首にかけてる白い箱、それなあに?
金吾 うむ……
金太 春子おばさん、見つか――(ハッと気が付いたらしく)え?お父ちゃん、これ、これが春子おばさんかい?
お仙 え? 春子おばさん、死んだのかい?
金吾 …………(無言でスタ、スタ、スタ、スタと歩く。金太郎もお仙も黙りこんでしまって、コトコトコトとつづいて歩く――間。かすかな音楽を流してもよかろう)

[#ここから3字下げ]
三人の足音が、お豊の家の門口に近づいて――
[#ここで字下げ終わり]

お豊 (家の中から)さあさあ、みんな飯だ、飯だ。お仙や金太はおせえなあ。さあさ――ああ、帰って来た、帰って来た。どうした――おや、金吾さんも帰って来た!
お仙 あのなあ、お母ちゃん――(いきなり手離しでオイオイ、オイオイ泣き出す)
金太 春子おばさんはな――(これも姉の泣声につられて、オイオイ泣き出す)
お豊 するつうと――(ト胸[#「ト胸」に傍点]をつかれて口を開けて立つ)
金吾 お豊さん、いま帰りやした。これが春さんの……(首からさげた木箱をゴトリと上りくちに置く)
お豊 (ふるえる声で)まあ、上りなんして――(ゴト、ゴトと金吾が上にあがって、囲炉裏端に坐る)
お豊 お仙、金吾おじさんにお茶出すだ。
お仙 あい。(涙声)
お豊 金太も上れ。そいから安三、お千代なんずは、そらそら、飯ば食え。(それらの小さい子たちがお膳に坐って箸などを取る音)
金吾 ……喜助頭梁は?
お豊 喜助は二三日前から仕事で小諸に行きやした。
金吾 そうかよ。……(無感情にポツリと話し出す)……空襲にうたれてな。いや、俺あやっと、この人ば上野の駅でみつけてな、そいで、こっちへ一諸に逃げて連れて来る気で、切符も手に入ったども、そこへまた、えらあ空襲でな。いや、その前から、なんか空襲の時に、瓦なんか落ちてきて胸をうってな、あばら骨が折れたんじゃねえかと思う。弱っていたが、
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