ィっしゃろうとすることは私にはわかるけど、しかしね、今主人の言った、この際そういうわけにはいかないんで、いえ、これの親は――母親だけですけど、広島の田舎に居ましてね、まあ、こういうことについても、ホントから言えば相談しなきゃならないんでしょうけど、実は向うでも、まあ何から何まですっかり私達に任せてありましてね、こんだ入隊する前に母親とも逢って行くわけなんですけど……私達はこれ以上のことは言えない。
敏子 (その場の空気におされて、涙を流している)しかしおばさん、すると私はこのあと、どうして行けばいいんです? どうして生きていけばいいんですの?(畳に泣き伏す)
杉夫 (気持をおしこらえたまま)敏ちゃん、君がそう言ってくれる気持はありがたいと思う。しかし、その君の気持を僕は受けられないんだ。それをわかってくれ。今わからなければ、二年か三年たってから必ずわかってくれると思うんだ。
敦子 (傍を見て)あら、どうしたの春子さん? 眼が覚めた?(春子がムックリと起き直る気配)
春子[#「春子」は底本では「敏子」] うん。(子供のように頷く)
金吾 どうしやした、春さん?
春子[#「春子」は底本では「敏子」] (子供が読本でも読むように、非常に単純な言い方で、スラスラと殆ど一息に言う)……いいえ、私は眠っちゃいません。みんな聞いているの。私は敏子の母親です。敏ちゃん、私はね、頭が馬鹿だけど、私はあんたのお母さんよ、だから、私の言うとおりにしてね、あなたは杉夫さんと結婚しなくてはいけません。杉夫さんもなんでもいいから敏子と結婚しなくてはいけませんよ。
杉夫 だけど、僕はもうすぐ出征しなくちゃならない人間です。
春子[#「春子」は底本では「敏子」] 出征なさろうと、何をなさろうと、そんなことどうでもいいの。あなたは敏子をお好きでしょ? 戦争に行くのでなければ、結婚したいと思っているのでしょ?
杉夫 ええ、そりゃそうです。
春子[#「春子」は底本では「敏子」] それならば結婚して下さい。私は敏子の母親です。その、私が言うのです! すぐに結婚して下さい。
敦子 でもねえ春子さん、必ず死ぬということを考えないでは戦争には行けやしないのよ、杉夫がもしそうなったら、敏ちゃんは後に残ってどうするんですか。結婚式を挙げたばかりで敏ちゃんの方は未亡人。みすみす不幸の中に落ちることになるのよ。
春子
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