ヨ子 ひどい音ねえ!
お仙 春子おばさん、恐がってるずら?
金太 なあに、崖の方なら聞こえやしねえや。
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急速にすうっとマイクが飛んで、途中でトラクターの音が一たん消えて、それから風に乗って、また反響がついて激しくなったトラクターの音を伴なって、マイクは崖っぷちの春子と金吾のもとへ寄る。
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春子[#「春子」は底本では「敏子」] あっ! 戦争がやってくる! 金吾さん、どうしよう戦争がやってくるわ!(飛び上って叫ぶ)
金吾 (これも立上って、春子を抱きとめながら)春さん大丈夫だ。あれはトラクターでね、そんな恐がらなくても大丈夫でやすから――
春子 金吾さん、恐い、逃げましょう、戦争がやってくる!(金吾の腕の中で、身をもがく)
金吾 大丈夫でがす、あれはトラクターだ。そんなに恐がらなくっても、ここでそんなに暴れると、崖から落ちるだから、ここへ落ちれば粉微塵になって死んでしまう。
春子 え?(死ぬといわれて、キョロンとして)死ぬ?(崖の下を覗いてみる)金吾さん、あのね、私もう死んだ方がいい。私死ぬ。恐いから、あんなに戦争がやってくるから――
金吾 死ぬ……そんな春さん、そんなことしちゃいけねえ、あんたが死んだりすると、それこそ敏子さまや敦子さまや、それから――
春子 敏子? ああ、敏子はね、敦子さんの甥の杉夫という子と結婚することになっているの。好き合ってね、だから敏子のことは安心なの、心配いらない。私はもう死んだ方がいいの、生きているとみんなに心配ばかりかけて――だから死ぬ、離してよ。
金吾 いやあ春さん、あんたが死ねば俺も――
春子 金吾さんも死ぬ? 一緒に死んでくれる
金吾 ……(春子の顔をジッと見つめている)死んでもようがす。
春子 うれしいわ!
金吾 だけんど、すると敦子さまや、敏子さまや、その杉夫つう人や、そいから俺んとこの金太郎だとか、お豊さん、壮六、喜助……みんな泣きやす。死んじゃならねえ。
春子 泣くの、みんな?
金吾 泣きやす。
春子 でも、ああして戦争がくるのよ……
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(カタカタ、カタカタとトラクターが行く)
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金吾 戦争が来たって何が来たって、死んじゃならねえ、みんなが泣くだから。
春子 だって、ほら!……
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そうやって、崖の上
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