ごろになると
ハラハラして頭が痛くなりますよ」
「だってお母さん
市へ出かけるのは、もうあと十分近くありますよ」
「いえ、お前のことじゃありません
あれごらん、お父さんはあの調子だし
それでお隣りの木魚の音が
やっと聞えなくなったと思うと
婆やさんが、あの声でああだろう
あれではお父さんにもつつ抜けだよ
少し遠慮してくれるといいけどねえ」
「でもしかたが無いでしょう
お婆さんはなんと言ったって
オシャベリはよさないし
それに臭いは
お婆さんの言う通りですからね」
「そらそら、またお前までがそんなことを言う、それはね、どんなに臭くても
花造りのコヤシいじりは内の家業ですからね」
「しかしタメをかきまわすのは昼すぎだってできるんだ
朝っぱらからする必要はないですよ
お父さんのは隣りの木魚が鳴り出すとたちまち始まるんだ
まるきりシッペ返しみたいだからな」
「おおい、昇! そんなところで何をぐずぐずしているんだあ?」
となりの小父さんがタメのところからどなります
「そらそら昇、急がないと!」
「花は自転車につけたぞう!
早く行かないと花が可哀そうだぞ!」
「はあーい!」と昇さんは答えてかけ出し
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