マンしながら頬笑んでいたけれど
心はシーンと、まじめでした
それから昇さんがイタズラそうにニコニコしながら
「しかしね光ちゃん
僕らは新らしい時代の若い者だ
古い人たちの落ちたワナに落ちてはならんのだよ
旧い人たちの中には、こんなことから
男と女として仲良くなってしまって
恋愛なぞをはじめる人もいるが
僕らはそうなっては、あかんのだよ
恋愛は恋愛、仲よしは仲よしだよ
なぜこんなことぼくが言うかと言うと
いつか内の母がきげんの良い時にぼくをつかまえて
「お前にお嫁さんもらう時には
おとなりの光子さんのような
気立ての良い子がいいね」
と言って、からかったことがあるからだ
母は本気でそれを望んでいるのかもしれんのだよ
だから君んちの小父さんと内の父の不仲を
よけいに苦にやむのかな、ハッハハ!
いいかい、光ちゃん、それからね
親と親とが仲が悪いと、そのためにかえって
逆に子供と子供が恋愛に落ちることだってあるんだぜ
いつか「ロミオとジュリエット」と言うのを読んだことがあるだろう?
あれさ! あれもワナだよ
裏返しにしたワナだよ
気をつけようぜ、光ちゃん!
僕は光ちゃんが大好きだ
将来、光ち
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