ハ
おれ、光ちゃんのこと思い出してさ
どうしてるかと思ったもんで駆けて来た
やっぱり小父さんも婆やさんも光ちゃんのこと
置いてきぼりで行ったんだな、ハハ
しかしもう大丈夫だ
安心したまい、光ちゃんよ!」
「ああ、昇さん、いったいどうしたの?
またうちの父とお宅の小父さんが喧嘩したんでしょ?」
「え? 喧嘩?
ハッハハ馬鹿な! 喧嘩なんかじゃないよ!」
「ですから、あたしには何のことやらサッパリわからないんじゃないのよ?
さっきからの騒ぎ
表のオコシヤさんの角の辺に聞えたけど
一体全体どうしたの?」
「あ、そうか、そうだな、光ちゃんにはわからないのが当然だ
そうなんだよ、オコシヤで火事を出したんだよ
オコシヤの裏の工場でアラレを作るんで
あんまり火を燃しすぎたと見えてね
釜場の裏のハメ板が加熱しちゃって
不思議じゃないか、そっちの方は燃えないで
そら、僕んちの物置がすぐあの裏に立ってるだろ
あの物置の草屋根の下から燃えあがったんだ
その火を一番最初に見つけたのが誰だと思う?
こっちの花婆ちゃんさ
ハッハ、耳は遠いが目は早いんだね
暗いうちに、はばかりにでも起き出したか
お宅の本堂のわきか
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