になつて子ば育てるか……。
紙芝 ……ウム。
トヨ ダルマは死ぬより辛いと云ふ。直きに病気になるげな。(と次第に独言の様になる)二人で生きて居れんなれば、どつちか一人は死なんならんのぢや。好きで産んだ子でも無いに、生れて見れば可愛うて、自分の身はたとえ死んでも子供の手足は伸してやりたい。これはどう云ふ訳でがせうね? 神様がわし等ばこらしめなさるのぢやらうか? 罰ばお当てんなるのかね? ……かうして居ても乳が張つて、わし等は苦しいのです。わし等に子供がいとしいのは、やつぱり罰が当るのぢやらう。
紙芝 ……罰をねえ。……子供さんのお父つあんは?
トヨ……(ツト立つて相手を見詰める。父と云はれて不意に湧いた反感がその顔に認められる。ヂツと見詰めてゐたが、相手に皮肉の意味が全然無いのを見て、我れに返つて)……ハハハ、あんた様は村の人では無かつたけ。村の人ならば、私にそんな事ば、真面目になつて問ひはせんもの。ハハ。……食いぶちだけは仕送るから、末は必ず嫁にするからと、無理に私をだまくらかして……。それに、それに、私あ……。
紙芝……?
トヨ (声をしぼつて)何でもええから、自分を可愛がつてくれる
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