ことができる。それに、なんにも無いよりは、憎しみでさえ、有ったほうがよいのだ。むしろ、今のぼくらの空気の中には、サッカリン式の『愛情』や『善意』が有りすぎる」
まず最初に、私は、私のたいへん尊敬している三人の文学者に吐きちらす。それは広津和郎と志賀直哉と武者小路実篤である。
この三人が、大インテリであるかどうかについては問題があろう。だが今の日本の文学者の中から大インテリとしての質を持った者、または持ち得るものの二、三人を拾うとなれば、ここらではないかと思う。
大インテリとは、すべての党派性と地方性から独立しており、そして、すべての人間の運命に一番近く立っているものの事である。そして、他のどんなものからも支えられずに、自らの力で立っているものの事である。ロマン・ローランがそうであった。ジイドがそうだ。トマス・マンがそうだ。ショウがそうだ。アインシュタインがそうだ。もちろん人類にとっても一民族にとっても代表的な貴重な個性である。ジイドの「今後の世界はホンの二人か三人の人間によって救われるであろう」という言葉の、その二人か三人というのが、これにあたるかどうか、わからない。しかし、い
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