」に書いた一連のエッセイは、いくらか評判になったそうです。現にあなたも、あれに注目してくださった一人です。いろいろの反響を総合して見るのに、話半分に聞いたとしても、或る程度のトピックになった事は事実のようです。それが、はじめ私には不思議でした。次ぎになさけなく思われました。やがて不快になったのです。
 なぜなら、あれらのエッセイの中に、私は、格別にすぐれた事や変った事や独創的な事など、ほとんど書いていません。私の発言の出発点は平凡な常識にすぎませんし、そこからの展開の範囲も、常識の域を一歩も出ていないのです。これは一般的に言ってもそうでありますし、私自身のことだけを言って見ても、そうしようと思えば、すぐれた事はどうか知れませんが、もうすこし変った事や独創的な事なら書けそうに思った事がありますが、わざとそれをしないで、ホントの常識論だけに自分を限ることに努めたのです。そこに書かれてあることは、私自身にとっても人々にとっても、文芸やイデオロギイについてのABCに過ぎないのです。これは、ケンソンして言っているのでも、同時に、威張ってモッタイをつけるために言っているのでもありません。
 その常
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