りです。ところで、共産主義というものは理論的にも実際的にも或る種の戦争を肯定する、すくなくとも、やむを得ないものとする主義なのです。その主義を信奉する人たちが、「戦争はよしましょう」というスロオガン――われわれの普通の常識ではそれは「あらゆる戦争をよしましょう」と取るのが一番妥当だし、現に一般がそう取っている。――の下で主導的に運動しているのは、私には矛盾かまたは虚偽のように思われるのです。
 それが「やむを得ない矛盾」――つまり人間として誠実に考えた結果として引き起きた矛盾――ならば、われわれはこれを深くとがめてはならないと思います。しかしその場合にも、当人がその矛盾の中のどの要素が自分の本心であるかを公に示してくれる必要と義務があります。それをしないで一方において共産主義者でありながら一方において「あらゆる戦争」に反対する平和運動に参加しているならば、仮りにそれがどんなに誠実な意図に発してなされているとしても、客観的に自他を深く毒し、平和運動全体を虚妄のものとして終らせる原因の一つになると思います。
 もしまた、虚偽であるならば――もちろん共産主義者自身は多分それを必要な現段階的戦
前へ 次へ
全274ページ中192ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング