れは彼の「天衣無縫」の路について行けはしなかった。しかし、彼の「人道主義」には、ついて行きたかったのだ。これからも、ついて行きたい。それには、「天衣」を脱いでくれないとダメだ。「天衣」は美しいが、デタラメだからである。
そのへんを、もっとハッキリ言うことにする。われわれを包んでいる歴史の流れは、まだきわめて不安定な段階にある。これから先、われわれはいろいろな目に会うであろうし、会いたいと思うし、そしてその中でわれわれは、なにもしないで手をつかねているわけには行かぬだろう。いろいろな目というのは文字どおりいろいろな目だが、その中で一番極端なものは戦争といったような事であろう。戦争はおたがいに、もうイヤである。起らぬように、それぞれの立場から努力したい。しかし、いくらイヤがっても努力しても、戦争は起きるかもしれない。そして、戦争以外の此の世のあらゆる現象も、よく考えてみると、それと同じようにして起きる。そうなった場合に、しかし、「あれも、これも、すべてよし」では困るのである。これが善ければ、あれは悪いのである。その逆もそうである。ところが武者小路の「天衣無縫」には、「あれもよし、これもよ
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