上で、特攻隊くずれの青年がゴロツキになったりドロボウになったりしている事を、たいへんはげしい言葉でフンガイしたことがある。私はビックリした。志賀らしくないと思った。その次ぎに、しかし、いかにも志賀らしくあるとも思った。どちらに思っても私はゲッソリした。そして志賀を憎んだ。今でもその点では憎んでいる。
 志賀の意見の出どころが、そんなにまちがったもので無いことはわかった。意見そのものも、まちがっていたとは思えない。特攻隊くずれであろうと何であろうとゴロツキやドロボウは悪い。それはそれでよい。やりきれないのは、それを言う態度の薄っぺらさだ。それを『暗夜行路』の作者がやってのけていることだ。ぜんたい、この間の戦争をふくめての此の十年二十年を、その中でチャンと日本人として――その権利と義務を行使して――つまり、ホントにナマミで生きて来た人間が、どこを押せば、その十年二十年(自分自身をも含めて)の所産である特攻隊くずれを、あのように手ばなしに一方的に非難できるのか? 自分が特攻隊員だったと思ってみろ。また、自分のムスコが特攻隊員だったと思ってみろ。あの時、自分なり自分のムスコが特攻隊に引っぱり出
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